2014年6月26日木曜日

インバースアゴニストについて

本日は、すこし難しいお話をしてみたいと思います。
じんま疹などで、かゆみの原因となる物質の代表格とも言えるのが
ヒスタミンという物質です。
このヒスタミンが作用するのを防ぐために抗ヒスタミン薬というものを使います。
じんま疹においては、
抗ヒスタミン薬を内服して病気の勢いを抑えていくことが重要ですが、
急に中止すると、かゆみが再燃してしまいます。
そのため徐々に減らして、
病気の勢いを抑えながら治癒に持っていくということが
重要とされています。
その学問的根拠について
少しお話します。
(ちょっと専門的なので、ご興味のない方は読み流してください)

ヒスタミンは、ヒスタミン受容体に結合して、
その作用を発揮します。
この作用を有するヒスタミンをアゴニストと呼びます。
抗ヒスタミン薬は
ヒスタミンが受容体に結合するのを妨げることによって
作用すると考えられています。
この作用を有するものを
アンタゴニスト
と呼びます。
この考えでは、
受容体にヒスタミン(アゴニスト)が結合した場合にのみシグナルが伝達されます。
抗ヒスタミン薬は、
ヒスタミン(アゴニスト)と受容体の結合を阻害することで
作用を発揮しますので、
ヒスタミンが存在しない状況下では
当然ながら、受容体が自然に活性化することはないと考えられてきました。
しかし、最近の研究で、
ヒスタミン(アゴニスト)が存在しないにも関わらず、
自然な活性化(持続的自然活性)がみられることが明らかにされました。
この考え方は、従来のアンタゴニストという概念では説明できないため、
インバースアゴニストの概念が提唱されるようになりました。

インバースアゴニストとしての抗ヒスタミン薬
この考え方においては、ヒスタミン(アゴニスト)が存在しない状況であっても、
活性型受容体と不活性型受容体との間に
動的な平衡が成立しており、
ヒスタミン(アゴニスト)に依存しない持続的自然活性がみられます。
アゴニストであるヒスタミンは活性化状態の受容体と結合し、
その安定性を高め、平衡を活性化状態へとシフトさせます。
その結果、活性型受容体が多くなり、シグナルが伝達されます。
一方、インバースアゴニストである抗ヒスタミン薬は、
不活性型受容体と結合し、平衡を逆方向の不活性化状態へとシフトさせます。
その結果、不活性型受容体が多くなり全体としてシグナルは抑制されます。
このことにより、
ヒスタミンが存在しない状況においても
(じんま疹においてかゆみが落ち着いている状況)、
インバースアゴニストである抗ヒスタミン薬を内服することにより、
受容体の平衡を不活性化状態へとシフトさせ、
病気の勢いを抑えていくことができると考えることが出来ます。
専門的なお話になってしまいましたが、
かゆみ(特にじんま疹における)に対する考え方を整理いただけましたら、幸いです